WX5(WX11)とVL70-mでT-SQUAREのTRUTHを吹こう!


ウィンドシンセをはじめたからには一度は吹きたい曲があります。
と書けば、おそらくほとんどの人が同じ曲を思い浮かべるのではないかと思います。
「日本一有名なウィンドシンセの曲」といっても過言ではない、あのF-1グランプリで使用された、伊東たけし氏の「TRUTH」ですよね。
「F-1の曲」といえば誰もが分かるくらい有名です。
思えばあの名曲が生まれてから、もう20年以上になるんですね。

TRUTHのリードは、リリコンにアナログシンセを繋げ、さらに様々なエフェクターで加工した音色を使っているようです。
今となっては情報も乏しく詳しい機種や設定値など真実はよく分かりませんが、アナログシンセ特有の分厚く温かく力強い音が、とても魅力的です。

EWI4000s吹きの人なら、アナログモデリング音源が内蔵されていますので、結構似たような音色を作り出すことができるようです。
EWI4000sの内蔵エフェクタでどこまでTRUTHリードに迫られるのか、興味あるところです。
とまぁ、このページを作った時はまだEWI4000sユーザーではなかったのですが、その後私もEWI4000s買いましてそれ以来はEWIばっかり吹いてます。

このコーナーでは、YAMAHAのウィンドシンセスティック「WX」1本(WX5/WX11/WX7)と、YAMAHAのバーチャルアコースティック音源「VL70-m」1台のみという無謀な環境で、あの伝説の音色を再現しようというわけですが・・やっぱり無謀でした。
音源にWT11を使用している方は対象外となっていますが、TRUTHという曲の「TRUTHらしさ」は、本当のところをいうと8割方奏者の演奏技術によるものです。
音色自体はシンプルですので、WT11でもTRUTHらしい奏法をすれば十分「それらしく」聞こえると思います。

■音色制作
あの音色が無いと何も始まりません。
まずは「あの音」を掘り下げて研究してみます。
私が聞いた限りの感じですが、あの音には5つの特徴があります。

(1) 音色そのものは、よくありがちな「SAW LEAD」系ではなく、「SYNTH BRASS」系の音色
(2) ファーストディレイがかなり短いオートビブラート
(3) この曲調には不釣り合いなほど深いディレイとリバーブ
(4) 個性的なイコライズ
(5) 意外に不安定

要するに、「音の作り込み」というよりは「エフェクタの設定」という感じです。
(5)の「意外に不安定」ですが、これは当時のアナログシンセが不安定だったためだと思います。
最近の伊東たけし氏、本田雅人氏、宮崎隆睦氏がEWIで吹いているTRUTHのリード音はとても安定してますし。
当時のレコーディング環境もアナログ主体でしたし、今ほど優れていなかったのは明白です。
さすがにフルデジタル音源でこの不安定感を再現するのは無理なので、この点は諦めることにします。

残り4つの特徴に従って、VL70-mの各パラメータを設定していけば、自ずとあの音に近づいていくはず・・。

Voice Pr1-102 Brassyn
EDIT-CONTROL
PB Ctrl +03
PB LowCtrl -03
Exp Mode BC
Fil CC No. 02
FilCtrlDpt +127
Fil Curve +06
Amp CC No. 02
AmpCtrlDpt +127
AmpCurve +00
EDIT-FIL&EG
CutoffFreq -32
Resonance +04
FilEG Dept 00
Bass +40
Treble -03
Attack Time -32
Decay Time +20
ReleaseTime +00
EDIT-OTHERS
Vib Rate +08
Vib Depth +21
Vib Delay +10
Mono/Poly Mono
Porta Mode Full
Porta Sw on
Porta Time 000
Voice Name TruthLd
EFFECT-REV
Type HALL 1
ReverbTime 1.8
Diffusion 10
InitDelay 08
HPF Cutoff Thru
LPF Cutoff Thru
Rev Pan C
EFFECT-CHO
Type CHORUS 1
LFO Freq 0.16Hz
LFO PM Dpt 054
FB Level +13
Delay Ofst 106
Cho Pan C
SendCho→Rev 000
EFFECT-VAR
Type DELAY LCR
Lch Delay 333.3
Rch Delay 166.7
Cch Delay 500.0
FB Delay 500.0
FB Level +25
Var Pan C
SendVar→Cho 000
SendVar→Rev 040
VarConnect SYS
EFFECT-DISTORTION
Type 3-BAND EQ
Low Gain +00
Mid Freq 5.6k
Mid Gain -10
Mid Width 1.0
High Gain +05
Dist Part on
各エフェクタゲインレベル(ALL)
Revrtn 64
Chortn 64
Varrtn 64
各エフェクタセンドレベル
Revsend 40
Chosend 20
Varsend 70

実際に作ってみた音色がこれ↑です。
元にしている音色は、Pr1内にある102番の「Brassyn」です。

リップによるピッチベンドの幅は、デフォルトでは±2半音なのですが、少し表現力に欠ける気がするので±3にしています。
これは個人の好みで変えてください。(EDIT-CONROL内のPB Ctrl/PB LowCtrl項目です)

オリジナルの生音は1台の音源のように聞こえますが、もしかしたら同じ音源2台を使ってわずかに周波数をずらした音を重ね、ディチューン効果を出しているかもしれません。(「いとしのうなじ」のリリコン音色はこれですね)
しかしVL-70mはモノフォニックシンセですので、ディチューンは使えません。
苦肉の策として、コーラスで代用しました。

TRUTHリードには、独特の「こもったようでいてハリがある」感じがあります。
生音を400Hz付近でブースト&4~6kHz付近を落として、ディレイに送り、ディレイからのリターンを1kHzくらいのローパスフィルタに通して、ドライ音とミキシング後、さらにイコライザで高音域にハリを出しているような、そんな感じ。
TRUTHリードが持つ雰囲気の鍵は、この独特のイコライズを施したディレイにあるのではないかと思います。
つまりVL-70mの内蔵ディレイにLPF(ローパスフィルタ)があれば、かなりのところまで再現できそうだということになります。
しかし残念ながらVL-70mの内蔵ディレイには、LPFは存在しません。

結局、VL70-m内蔵の3バンドEQと、フィルター&EGの設定内のHIGHとLOWパラメータで調整するくらいしかできませんでした。
VL70-mは、リバーブにはLPFもHPF(ハイパスフィルタ)も内蔵されているのに、ディレイは素通しなんですよね。
イコライズは好みによるところが大きいと思いますので、各人設定してみてください。

結構重要なのが3BAND-EQで5.6kHz付近の中高音域をグッと落としているところです。
これをしないと、サビ部分やアドリブソロで耳が痛いだけの音になってしまいます。

リバーブのフィルターは完全に素通しにしています。
特にローパスがデフォルトのままだとサビ部分の音域がペラッペラになります。
これは、バリエーションをディレイで使用しているのですが、SEND→REVパラメータで大きくリバーブに送っているためです。

エンベロープはアタックレートを大きく削ってファストディケイを伸ばしています。
デフォルトのアタックレートだと少しモタる感があるので、こうすることでシンセブラスのアタック感の弱さを消し、後半の抜けの良さを再現しています。

ビブラートのディレイタイムは10にしていますが、これはAメロとBメロに合わせています。
原曲ではサビに入ると、とたんに3以下(0かも?)の超ショートディレイタイムになるようです。
この辺りはどちらに合わせるかで雰囲気が変わってきますが、ステージなどで演奏する場合は10にしておいた方が無難のようです。
ディレイタイム0でAメロを吹くと、えらく間抜けな演奏になってしまうので・・。
このビブラートは、ディレイやリバーブと併用することで音源を2台使ったときのような分厚さをシミュレートしているのにも役立っています。

コーラスは、前記したディチューンの代用と、デジタル音源の音の薄さをカバーする目的で使用しています。
LFOは0.16Hzにしていますが、好みに応じて0.08Hzにすると、よりピュアな感じになります。
その分音が薄くなってしまいますが。
ただでさえ音の薄いデジタル音源ですから、この辺りには頭を悩ませるところです。
実際のところこうして出来上がった音も、本物には遠く及ばないほど薄っぺらなのは仕方のないことかもしれません。

この音色を使って曲を吹くときに、最も大切なことがあります。
それは、WX5の運指切り替えディップスイッチを「サックス(c)」にしてはいけないということです。
この設定にしていると、換え指を使ったときにWX5が勝手にフィルタをコントロールしてしまい、期待通りの音にならないことがあります。
私は「サックス(b)」の設定で吹いています。
WX11を使っている人は、特に意識する必要はありません。

■マイナスワン音源の入手
こんなかんじで音は出来ました。
あとは吹くだけ・・となるのですが、まずはマイナスワン音源(いわゆるカラオケデータ)を入手しておかなくてはならないのは言うまでもありません。
楽譜を買って打ち込むなり、市販のMIDIデータを購入するなり、T-SQUAREのCDをボーカルキャンセラーを通して再生するなりしてください。
サンプルデータのマイナスワンは、打ち込みMIDIデータをSC-88で再生していますが、最近はソフトシンセの性能も上がってきたので、PC1台あればハード音源が無くてもそこそこのクオリティが出せるようです。



■では吹いてみよう!
WX5もWX11もWX7も、奏法に関するものは共通ですので、同じように読んでいただいて構いません。

■Aメロ


この部分は意外に難しく、TRUTHの「らしさ」を大きく決めるところです。
聞き手側としても一番期待してしまうところなので、一音一音しっかりと吹く必要があります。
楽器屋などによくある楽譜通りに吹くと、どうしてもその「らしさ」が出ないところでもあります。
結構アバウトな吹き方をしているところもあるので、CDをよく聞いて吹きましょう。
タンギングは「トゥ」ではなく、どちらかというと「ヌ」や「ル」に近い感じで。
ちなみに私が吹いたサンプルはこちら [MP3 271KB]。ご参考までに。

■Bメロ


アクセントを付ける音は、その音の手前に1音~半音下のノートを入れ、32部音符くらいの長さで楽譜の音に戻します。
これはこの頃の伊東さんがよく使われていた奏法です。
タンギングを使って、歯切れ良く演奏します。
とはいっても強すぎタンギングは禁物ですので、やはり「ヌ」や「ル」で行います。
私が吹いたサンプルはこちら [MP3 203KB]
私が吹いたサンプルはこちら [MP3 125KB]



■サビ

CDではこの部分でいきなりリリコンの音が分厚くなるように聞こえます。
これは安藤さんがギターでリリコンの1オクターブ下をユニゾンしているからで、リリコンの音やエフェクタの設定が変わるわけではないようです。
ただ、オートビブラートのディレイタイムが他の部分に比べてやたら短くなっているような気がします。
この辺りはライブ演奏ではさすがに再現できないのでそのまま演奏するしかなさそうです。

ここは楽譜通りに吹いても決して「TRUTH」にならない、重要な部分です。
ちなみにこのサビの部分は、CD収録版(リリコン)・ライブ版(EWI)・TRUTH1991(ソプラノサックス)で、すべて異なっています。
厳密に言うと、「Wordless Anthology III」に収録されている版も少し違うようです。
今回は当然、オリジナルのリリコン版に忠実に吹いていきます。
タンギングを入れるポイントをしっかり押えておかないと、イメージが変わってしまうので注意しましょう。
ブレスポイントがほとんど無いので、WX5の場合は肺活量勝負とも言えます。
その点WX11だと息が抜けないので結構楽ですね。
WX7は息抜け抵抗が調整できるので無敵です。
「Bメロその1」で使っている、アクセント手前に短いノートを入れるテクニックが連続して出てきます。
速いですが確実に入れるようにします。
2ループ目が終わったときの急激に2オクターブくらい下がる音は、和泉さんのキーボードっぽいので、適当に誤魔化して吹いてしまいましょう。
私が吹いたサンプルはこちら(1Loop) [MP3 218KB]
私が吹いたサンプルはこちら(2Loop) [MP3 265KB]

■中間ソロ
CD通りに吹けというほうが間違っているので(^o^; アドリブで好き勝手に吹きましょう。
CD収録版では、この部分だけブレス感が無いように感じるので、おそらくはリリコンと同じ設定をした音源に和泉さんのキーボードを繋いで、アルペジエータを併用して演奏しているものと思われます。
私が吹いたサンプルはこちら [MP3 407KB]

■ラスト
ここも中間ソロと同じく、キーボードのアルペジエータのような気がしますので、アドリブで好き勝手に吹きましょう。
私が吹いたサンプルはこちら [MP3 603KB]

といったところで、いかがだったでしょうか?
ウィンドシンセを手に入れたからには、一度は吹いてみたい「TRUTH」。
言葉通りこの曲はある意味、全ウィンドシンセオーナーにとっての「真実」なのかもしれません。
私の演奏が必ずしもベストとは言えませんので(っていうかボロボロです・・T-T)、みなさんもいろいろと研究してみてください。



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